ダイナミックマーケティング社

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SC・業態の事例研究①

サウスコーストプラザを取り巻くRSCのサバイバル競争

アメリカのロサンゼルス郊外のオレンジ群エリア(1つの固有のマーケット=SCを選択する場合に距離の抵抗要因が希薄なエリア=顧客が自分の趣向に基づき自由にSCを選べる範囲)の中で、圧倒的に強いサウスコーストプラザに対して、最初は苦戦していた2つのRSCが見事サウスコーストプラザと棲み分けて好業績となった事例を紹介します。

(1)サウスコーストプラザの特徴

サウスコーストプラザはリース面積260,400㎡、売上高1,500億円の全米№1の繁盛型SCです。 サウスコーストプラザは1つの固有のマーケット(200万人)であるオレンジ郡エリアの中で圧倒的強さを持つモノを売ることに徹したスーパーRSCです。 その概要は次の通りです。

所在地 333 Bristol Street Coast Mesa, CA 92626
開業日 1967年
敷地面積 821,541㎡
総リース面積 260,400㎡
核店揃え ①サックスフィフスアベニュー(上クラス百貨店)
②ブルーミングデールス(中上クラス百貨店)
③ノードストローム(中上クラス百貨店)
④メイシーズ(中中クラス百貨店)
⑤メイシーズメン(中中クラス百貨店)
⑥メイシーズホーム(中中クラス百貨店)
⑦シアーズ(中下クラスPDS)
専門店数 250店舗(ピンキリのテナントミックス)
商圏人口 200万人
売上高 1,500億円(15億ドル) マーケットシェア10.4%
集客数 年間2,400万人
1人当たり客単価 6,250円(グループ客単価15,625円)
売場効率 3.3㎡当たり1,964千円

サウスコーストプラザの特徴は次の通りです。

①圧勝型RSC

サウスコーストプラザは圧倒的売場面積による周辺SCを完全に囲い込むMDingで、周辺の競争SCを圧倒するSCです。 基本的には敵の参入を許さない独り勝ちのSCです。 周辺の競争SCであるファッションアイランドやアーバインスペクトラムに売場面積で圧倒し、長い間圧倒的な競争優位性を持った超繁盛型SCでした。

②理想的な核店揃えのRSC

サウスコーストプラザの核店は実に7店舗と多く、しかも上クラスのサックスフィフスアベニューから中下クラスのシアーズまでのピンキリ型の核店揃えで、かつその中間業態として中上クラスのノードストロームとブルーミングデールスの2核と、中中クラスのメイシーズが性格を変えて3店舗導入し、完璧な核店揃えができています。 それゆえに、モール専門店もポピュラークラスからラグジュアリークラスまでのピンキリMDingで、敵の参入を許さないSCづくりができています。

③3つのSCが融合した複合MDing型のRSC

サウスコーストプラザはピンキリ型の菱形MDingを取っています。 それゆえに、3つのグレードの異なるSCの複合した完璧なSCです。 すなわち、中下のシアーズとメイシーズが一体化したスタンダード型SC、中中のメイシーズ(3店)とノードストロームやブルーミングデールスが一体化したワンランク上のSC、さらにサックスフィフスアベニューとラグジュアリーブランドの専門店が一体化したツーランク上のSCの3重構造のSCから成り立っており、完成度の高いSCです。

④物を売ることに徹したRSC

モノ離れした後のSCは、集客力の強化のためエンターテインメント施設を導入していますが、サウスコーストプラザにはエンターテインメント施設はほとんどなく、客がモノを買うことがエンターテインメントであるとの位置づけを取っています。 それゆえにフードコートはなく、レストランも必ずしも十分ではなく、アミューズメント施設もほとんどありません。 かつ、モールの形状もランブリングモールではなく、どちらかと言えばストリート型モールです。 さらに、プレイスメイキング(居場所づくり)も力を入れておらず、とにかくモノを売ることに徹したSCづくりを取り、高業績のSCです。 日本の例で言うと、玉川高島屋SCと類似性があります。

(2)サウスコーストプラザを取り巻く競争状況の過去・現在

サウスコーストプラザの1つの固有のマーケットの中には次の競争SCが存在します(まだたくさん存在しますがとりあえず拾い出しました)。

①ファッションアイランド(ライフスタイルセンター志向のRSC)

②アーバインスペクトラム(エンターテイメント志向のRSC)

③ベラテラ(パワーセンター志向のSC)

④アナハイムセンター(パワーセンター志向のSC)

⑤タスティンマーケットプレイス(パワーセンター)

⑥ザ・ラボ&キャンプ(アンチモール)

⑦ザ・ブロックアットオレンジ(バリューセンター)

以上の7つのSCはすべてオープンエアモールです。 これはカルフォルニア州の気候に合わせたこともあるが、基本的にはサウスコーストプラザの強力なエンクローズドモールとの差異化が主な原因です。
ここで注目すべきは、サウスコーストプラザとファッションアイランドとアーバインスペクトラムの3つのRSCの競争状況です。 この3つ以外のSCはRSCではなくサウスコーストプラザとは異なるSC業態であり、サウスコーストプラザとの棲み分けが出来ています。 いわゆるサウスコーストプラザとの戦いを避けて戦線を離脱したSCです。
RSCのファッションアイランドとアーバインスペクトラムの概要は次の通りです。

<ファッションアイランドの概要>

開業日 1967年(5回のリニューアル)
SCの業態 ライフスタイルセンター志向のRSC
総リース面積 139,500㎡
核店揃え ①ニーマンマーカス(上クラス百貨店)
②ブルーミングデールス(中上クラス百貨店)
③ノードストローム(中上クラス百貨店)
④メイシーズ(中中クラス百貨店)
⑤ホールフーズマーケット(オーガニック&グルメSM)
専門店数 200店舗
売上高 730億円
集客数 年間1,300万人
1人当たり客単価 5,615円(グループ客単価14,038円)
売場効率 3.3㎡当たり1,730千円

<アーバインスペクトラムの概要>

開業日 1995年(3回の増床リニューアル)
SCの業態 エンターテインメント志向のRSC
総リース面積 111,600㎡
核店揃え ①ノードストローム(中上クラス百貨店)
②メイシーズ(中中クラス百貨店)
③ターゲット(下クラス百貨店)
④IMAシネマ(21スクリーン・年間160万人の集客)
専門店数 130店舗
商圏人口 133万人
売上高 439億円(推定)
集客数 年間1,500万人
1人当たり客単価 2,927円(客単価はサウスコーストプラザの2.1分の1)
売場効率 3.3㎡当たり1,300千円(推定)

1つの固有のマーケットであるオレンジ郡エリアの中には「サウスコーストプラザ」「ファッションアイランド」「アーバインスペクトラム」の3つのSCが激しい競争をしています。
実は、今でこそ3つのSCが互いに棲み分けて成立していますが、10年前まではサウスコーストプラザが1つの固有のマーケットの中で圧倒的強さ(売場面積及びMDing)を持ち、他のRSCの存在を許さない独り勝ちのRSCでした。 1つの固有のマーケットの中での競争優位性の要因は「規模」と「場所(立地)」です。 立地はここでは別として、3つの規模の比較をすると次の通りです。

サウスコーストプラザ ファッションアイランド アーバインスペクトラム
店舗面積 260,400㎡ 139,500㎡ 111,600㎡
規模比較 1.00倍(基準) 1.87倍 2.33倍

規模の優位性指数は競争相手より1.7倍あればヘマをしない限り負けることはありません。 10年前はサウスコーストプラザの周辺では草木も生えない不毛のエリアでしたが、現在は3つのRSCが互いに棲み分けて成立しています。 なぜでしょうか。

(3)負けパターンのRSCがサウスコーストプラザと棲み分けできた理由

サウスコーストプラザの商圏内は草木も生えない不毛のエリアであった1つの固有のマーケットの中で、いかにしてファッションアイランドとアーバインスペクトラムが棲み分け型SCに変身したプロセスは次の通りです。

①サウスコーストプラザは店舗面積において競争SCを圧倒し、MDingにおいてもピンキリ商法で、MDing上では敵の参入を許さない参入障壁の高いRSCでした。 しかしながら、サウスコーストプラザにも2つの課題がありました。
1つはプレイスメイキング(居場所づくり)性が希薄で、サードプレイス(第3の空間としての環境づくり)に課題がありました。 もう1つはエンターテインメント性が希薄で、モノを売ることの強味はありましたが、遊楽ニーズの希薄さに課題がありました(シネコンもフードコートもレストランもアミューズメントもほとんどありません)。

②モノを売ると言う意味でのサウスコーストプラザは完璧でしたが「堅い岩盤にわずかな割れ目」として、プレイスメイキング(第3の場)性とエンターテインメント性があった訳です。

③ファッションアイランドは1967年以来、負けパターンのSCでしたが1986年にジョン・ジャージ氏に依頼し、オープンエアゾーンを地中海風のデザインに導入して見事な自然とデザインが一体化したRSCへと進化しました。 しかしながら、いくら居心地感の良いRSCとなっても、集客は高まりましたが「もてあそばれ型SC」(人は集まるがモノが売れない!! 飲食は良いが物販がサッパリ!! 日祝日は良いが平日はサッパリ!!)になってしまい、遊びに行くにはファッションアイランド、モノを買うにはサウスコーストプラザという出向動機のRSCとなりました。 これを解決するために2003年からオープンエリアに60店舗分の小売りスペースを創出して、商環境と新規テナントの導入により物販が強化され、著しくにぎわい性のあるRSCに脱皮することができました。 それから、ファッションアイランドの物販力と集客力の高まりが続き、ついにノードストロームやホールフーズマーケットの核店が導入され、物販力が著しく強化され、勝ちパターンのSCになりました。 さらに、周辺のワーカーマーケットに対応するために、今までの内向きレイアウトから外向きレイアウトを積極的に行い、周辺の郊外の中の中心市街地に溶け込む街づくり型SCへと進んでいます。 このように、ファッションアイランドはサウスコーストプラザの弱味(?)であるサードプレイス(居心地感のある場所)で岩盤に穴を開け集客力を高め、さらに集客力と物販力を一体化して、結果的にサウスコーストプラザと棲み分けできる勝ちパターンのライフスタイルセンター志向のRSCとなりました。

④アーバインスペクトラムは1995年のオープン時は、シネマコンプレックスとレストラン街とアミューズメント街のエンターテインメントセンターでスタートしました。 このエンターテインメントは、サウスコーストプラザの弱点(?)であり大いに繁盛しました。 このエンターテインメントによる集客により隣接地に異質型専門店街をつくり、この異質型専門店は必ずしもうまく行きませんでしたが、エンターテインメント性の集客と一体化し、アーバインスペクトラムを強化しました。 さらに、隣接地にテーマパーク風のエンターテインメントゾーンとメイシーズやノードストローム、さらにターゲットの核店を導入、さらにRSCのテナントを導入し本格的なRSCに成長しました。 アーバインスペクトラムは最初からノードストロームやメイシーズやRSC対応専門店を導入するとサウスコーストプラザにより苦戦を強いられたと想定されます(順不同の原則)。 しかし、サウスコーストプラザが希薄なエンターテインメント性で岩盤に穴を開け集客力を高め、その集客と物販力を一体化してエンターテインメント志向のRSCを結果的に勝ちパターン化しました。

このようにファッションアイランドもアーバインスペクトラムも、サウスコーストプラザの持つほんのわずかな弱点(?)を活用し、自らの集客力を創出し、そして集客と物販を一体化してSCを勝ちパターン化しました。 その結果、今ではサウスコーストプラザの中にあるノードストロームやメイシーズをファッションアイランドやアーバインスペクトラムも導入することができ、ファッションアイランドとアーバインスペクトラムはサウスコーストプラザに対し「3割差異化・特化、7割総合化(ノードストローム&メイシーズやRSCの専門店の同じ核店や専門店を導入)戦略」で勝ちパターン化しています。

SC・業態の事例研究②

ワシントンDCでの3.5のSC成立理論とタイソンコーナーの戦略的“へま”

(1)1つのマーケットの中での勝ちパターンのSC

1つのマーケット(SCへの出向の時間・距離抵抗要因の希薄なエリア)の中で「2.5SCの成立理論」及び「3.5SCの成立理論」があります。 すなわち、1つのマーケットには2つのSCが成立するという王道成立理論と、ハードルは高いが1つのマーケットに3つのSCが成立するという例外成立理論があります。 一般的に1つのマーケットを距離で表現すると、日本では周辺市街地と第1次サバーバンエリアが5㎞圏、第2次サバーバンエリアが10㎞圏、カントリーエリアが20㎞圏ですが、アメリカでは車中心のサバーバンエリアですので20㎞圏(日本のカントリーエリア並)です。

(2)ワシントンDCでの3.5SCの成立理論と課題

ワシントンDCの1つのマーケットの中に

・タイソンコーナー(店舗面積21万㎡でノードストローム、ブルーミングデールズ、ロード&テイラー、メイシーズが核店とする300の専門店)

・タイソンズギャレリア(店舗面積7.6万㎡でニーマンマーカス、サックス、メイシーズが核店とする150の専門店)

・ファッションセンター(店舗面積12万㎡でノードストローム、メイシーズが核店とする190の専門店)

の3つのSC(3.0)があり、中心市街地のストリート型の商業街区が0.5として複数立地しています。
タイソンコーナーは西のサウスコースとプラザと東のタイソンコーナー(あるいはルーズベルトフィールドモール)と言われる超好業績のSCです。 この3つのSCを業績で評価すると「タイソンコーナーが“優”」「ファッションセンターが“良”」「タイソンズギャレリアは“不可”(?)」と想定されます。 ワシントンDCでは1つのマーケットに「2.5のSCが成立」しており、3番手のタイソンズギャレリアの成立のハードルは高くなっています。
タイソンコーナーとファッションセンターの2.0のSCは、欠くことのできないノードストロームとメイシーズの2つの核店(汎用性のある核店)を導入して売れ筋ソーンをしっかり確保し、好業績を上げています。 特にタイソンコーナーは、2位のRSCに対して2倍の売場面積を持ち、リーズナブルゾーン、アッパーゾーン、エンターテインメントゾーンを強力に展開して超好業績を上げています。 特に3Fにシネコン、ゲームセンター、子供の遊び場、フードコート、スポーツバー(大人のフードコート)を導入して集客力のあるゾーンを形成しています。

(3)タイソンコーナーの“へま”(機会利益の損失)

タイソンコーナーとタイソンズギャレリアは至近距離(約1㎞)にあり、同一ディベロッパーが所有・運営しているものと思っていましたが、調べてみると競争関係にあることが判明しました。 そうなると、1つ疑問点が存在します。 それは、規模が2倍以上あるタイソンコーナーが半分以下の規模のタイソンズギャレリアと棲み分けをしていることです。 圧倒的一番型SCで競争SCをMDing的に囲い込んでいる「サウスコーストプラザ」は競争SCとの棲み分けを許さず、規模の優位性を発揮して敵の存在を許さないピンキリMDingを導入しています。 MDing的に囲い込むということは、敵の持っている商品及び機能は全て持ち(戦略的同質化)、さらに敵の持っていない商品及び機能をも持つ(戦略的異質化)することにより、顧客は競争相手であるSCを利用する必要のない状態をつくり出す戦略です。 そのためには、最低1.4倍の規模(1.4倍の規模の優位性があれば、3割は競争相手にない商品及び機能を持ち、7割は競争相手が持っている商品及び機能持つことができる優位規模)を持ち、できれば1.7~2.0倍の規模を持つことが必要です。
タイソンコーナーはタイソンズギャレリアの2.8倍以上の売場面積を持ちながら、リーズナブル・アップグレード・エンターテインメント性は圧勝していますが、ラグジュアリー&ハイクラス志向のMDingの分野はタイソンズギャレリア(ニーマンマーカス、サックスフィフスアベニュー、ラグジュアリーテナント)に譲っています。 タイソンコーナーとタイソンズギャレリアが棲み分けしているのはタイソンコーナーが戦略的に高級ゾーンを放棄したのか、あるいは後から開発したタイソンズギャレリアが残り物に福方式で高級ゾーンを確立したのかは定かではありませんが、タイソンコーナーが機会利益を損失していることは事実です。 とは言うものの、タイソンズギャレリアは売れ筋ゾーンをタイソンコーナーに取られていますので、大苦戦しています。 特に、サックスの存在と高級イメージの強過ぎるモールには課題が多く存在しています。

<タイソンズギャレリアの課題>

①サックスの代わりにノードストロームを核店とできなかったのです。 今、アメリカの勝ちパターンの核店揃えは「ノードストローム」と「メイシーズ」を基軸の核店とし、その上にワンランク上のサックスやニーマンマーカスを導入するワンランク上のSCと、その下にシアーズやJCペニーやターゲットを導入するワンランク下のSCづくりが勝ちパターンづくりです。

②その意味において、核店揃えが高級志向(ニーマンマーカスやサックス)に片寄りすぎており、さらにラグジュアリーブランドのテナントを数多く導入しており、ツーランク上のSCとなっており、周辺に富裕層が多いと言え、高級SCづくりのノウハウに課題があります。

③また、モールの完成度が低く、単に高級志向のカジュアル性のないモールとなっており、ランブリングショッピングモール(そぞろ歩きをしながら買物をするモール)とはなっていません。 それは専門店の数と専門店相互間の相乗効果システムができていないからです。

④完成度の高いモールは「アミュージング(楽しい)」「アメイシング(驚き)」「アメニティ(快適性)」の3つの“A”が必要であり、タイソンズギャレリアには上記の3つの機能は全くなく、特にエンターテインメント性は大いに希薄です。

⑤ただ、タイソンコーナーがタイソンズギャレリアの存在を許した形の姿となっているため、また、マーケット内の富裕層の大きさから見て「中の中ニーズを強化」と「エンターテインメント性の強化」と「過度な高級志向の減少」の3つの戦略をノウハウ高く導入することです。

⑥高級志向のテナントを成立させるための王道は、サウスコーストセンターのように、中の中のメイシーズを3店(メイシーズ、メイシーズメン、メイシーズ・ホーム)と中の上のノードストロームとブルーミングデール、さらに上の上のサックスを導入し、核店を高級ブランドのインフラとして充実させ、その上にニーマンマーカスではなく、ラグジュアリーブランドや高級テナントを導入して、ニーマンマーカスを導入せずに見事に成功させています。 ニーマンマーカスを核店として導入するよりも、インフラを充実させ、ラグジュアリーブランドや高級ブランドを充実させる方がディベロッパーの収入の面の効果が高くなります。

SC・業態の事例研究③

トパンガのリニューアルによる変身商法

1964年にオープンしたRSCのウエストフィールド・トパンガ(以下、トパンガ)が3回のリニューアル(1回目は1992~1993年、2回目は2005~2008年、3回目が2014~2015年)を行い、画期的に変身しました。 現在のトパンガのSCとしての概要は下表の通りです。

SC名 ウエストフィールド・トパンガ
所在地 6600 Topanga Canyon Blvd, Canoga Park, CA 91303
SCの業態 ハイブリッドモール型RSC(2015年オープンエアモール追加)
開発者 ウエストフィールドグループ
敷地面積 52万㎡(本体敷地40万㎡、ザ・ヴィレッジゾーン12万㎡)
総リース面積 152,249㎡(ザ・ヴィレッジゾーンの推定商業リース面積30,000㎡)
業態ミックス
(ザ・ヴィレッジゾーン除く)
リース面積 業態のレベル 備考欄
核店 ニーマンマーカス 11,160㎡ 上クラス
ノードストローム 20,926㎡ 中上クラス
メイシーズ 23,425㎡ 中中クラス
シアーズ 14,905㎡ 中下クラス 2015年退店
ターゲット 9,300㎡ 下クラス
小計 79,716㎡ ピンキリMDing
モール専門店 63,307㎡ ピンキリMDing
その他 9,226㎡
合計 152,249㎡ 核店比率52.4%
専門店数 359店舗(本体279店+ザ・ヴィレッジ80店)
駐車台数 6,041台 ザ・ヴィレッジ除く
商圏人口 87万人
売上高 6億6,730万ドル(購買力平価100円換算667億円)
年間来館者数 1,170万人
1人当り客単価 5,701円(グループ推定14,000円)
3.3㎡当り売場効率 1,325千円

このトパンガのSCとしての特性は次の通りです。

①最初はワンレベル下からスタートし、次いでスタンダード型SCへ、さらにワンレベル上・ツーレベル上のSCへとリニューアルを3回くり返し、見事に変身商法を展開しています。

②MDing的には「ピンキリ商法」を展開し、マーケットの中中から中下の所得層(庶民層)と高所得層の2極化したマーケットの「串刺しターゲティング」を行っています。

③核店の業態ミックスは上クラスを「ニーマンマーカス」、中上クラスを「ノードストローム」、中中クラスを「メイシーズ」、中下クラスを「シアーズ」(現在は退店)、下クラスを「ターゲット」が担当し、フルターゲット・フルMDingのSCです。 また、専門店もラグジュアリーブランドからポピュラークラスまでピンキリのテナントミックスであり、核店揃えと専門店ミックスを適合させて高い客単価を達成しています。

④本体ゾーンの中央ゾーンを「ザ・キャニオン」(撤退したモンゴメリーワードの跡)を中央に配置して、そこをアトリウム空間として街並み型店舗を導入して賑わいを演出し、そして2つのレーストラック状のダブルサーキットモール化しています。

⑤最高級の百貨店である「ニーマンマーカス」とディスカウントストアの「ターゲット」という両極端な核店を導入し、多様なマーケットの客層を串刺しにするハイブリッドMDing&ハイブリッドターゲティングを行っており、このような核店揃えはおそらくアメリカのSCで始めてと思われます。

⑥隣接地にオープンエアモールの「ザ・ヴィレッジ」を付加して、エンクローズドモール70%(概念割合)、オープンエアモール30%(概念割合)のハイブリッドモール型のSCとなっています。 オープンエアモールゾーンは80の専門店(コストコとクレート&バレルを核店として導入)がストリート型・街並み型で構成され、まさにライフスタイルセンター(ライフスタイルセンターの3つのタイプのうちレジャー志向のライフスタイルセンター)を形成しています。 周辺には商圏内の居住者のみならず、郊外における中心街区に立地しているため、周辺のオフィスワーカーニーズやホテルへの観光・レジャー・業務ニーズのマーケットも期待できます。

アメリカでは一流のSCの売上高は1,000億円以上、日本では500億円以上が基準となりますが、トパンガは現在、本体のみで667億円、ザ・ヴィレッジが170億円と推定(コストコ含む)すると837億円となり、近未来に1,000億円台を達成する可能性が十分あります。
このトパンガの3回リニューアルによる「変身商法」は次の通りです。

①第1段階「スタンダード型SC」の時代

トパンガの開発当時(1964年)は、ブルーカラー層の多い庶民的マーケットであったため、スタンダード型SCとワンランク下のSCでスタートしました(核店はブロードウェイ、メイカンパニー、モンゴメリーワードの中中~中下レベル、後にノードストロームの中上レベルが追加)。

②第2段階「ツーランク上とピンキリMDingのSC」の時代

その後、富裕層マーケットが形成されたため、スタンダード型SCであるトパンガは1992~2006年にかけて随時、核店とモール専門店の入れ替えを行い、特に最下位クラスのターゲットの導入と、最高級クラス(上クラス)のニーマンマーカスを核店として導入し、かつテナントミックスもラグジュアリーブランドテナントと庶民的テナントをミックスさせ、ツーランク上のSCのポジショニングの地位を確立すると同時に、庶民マーケットへのターゲティングの強化(ターゲットの導入)を行い、文字通り世にも不思議なレベルで2極化したピンキリMDingの核店・テナントミックスを達成しました。

③第3段階「ザ・ヴィレッジを付加してハイブリッドモール化したSC」の時代

さらにトパンガは2015年に隣接地にオープンエアモールのストリート型・街並型の21世紀の最適業態ライフスタイルセンター(ザ・ヴィレッジのレジャー志向のライフスタイルセンター)を導入し、本体のRSCのトパンガと一体化して、21世紀の最強業態であるハイブリッドモール型SCへと進化しました。

このように、時代の潮流やマーケットの変化に対応してSCの業態及び性格を大胆かつ斬新に切ることを「変身商法」と言います。 競争相手の見えない空白マーケットを見抜き、先陣を切って斬新に行うと大きな成果が発揮されます。 そのためには、積極的かつ巨大な投資が必要となり、今アメリカの金融経済に支配されているSCは、SC価値づくり(SCの金融資産化)の観点からリニューアルが行われています。 アメリカでは豊富な資金と高いノウハウを持つサイモン社やウエストフィールド社が既存の課題があるSCを買収して、巨大な投資・高いノウハウを付加してSC価値(潜在的売却価値)を高めています。
トパンガのリニューアルにおける見事なノウハウは次の通りです。

①時代の変化、マーケットの変化をチャンスと捉えて、リニューアルの際に大胆かつ斬新かつ巨大投資を行い、脱・過去の延長線上の見事な変身商法を適用している。
すなわち「スタンダード型RSC」から「ツーランク上かつピンキリMDing」さらに「まちづくり型のライフスタイルの導入によるハイブリッドモール型SC」(21世紀の最強のSC)へと大変身しています。

②2極化したマーケットに対して、1つのSCでありながら、2つのSCの複合(中上から上クラスのSCと中中から中下クラスのSC)により、見事客層を串刺しにし、かつハイブリッドMDingを適用しています(サウスコーストプラザは、さらに3つの性格の異なるSCを複合化して1,500億円の売上を達成している)。

ここで注目すべきは、トパンガのみならずアメリカのSCの客単価の高さです。 アメリカのSCの売場効率は日本並みですが、客単価は日本の2倍です。 すなわち、アメリカのSCは日本のSCより半分の集客力で同じ売上を達成することが可能です。 日本は1990年代前半から、デフレ経済時代及びモノ離れした後のエンターテインメント型RSC(CSC時代より客単価は半分、しかし集客は4倍、結果的には売上は2倍)のため、1人当たり客単価が2,000~2,500円と著しく低く、アメリカのSCの5,000~6,000円の半分です。 脱・デフレ経済及び過度に傾斜したエンターテインメント型RSCからの脱皮により、21世紀型のSCへと進化することが必要です。 もう、人で混むSCは客に嫌われます。