ダイナミックマーケティング社

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流通トピックス情報①

書籍業界のバーンズ&ノーブルと蔦屋書店の基本戦略の相違点

書籍業界で、アメリカの雄の「バーンズ&ノーブル」の苦戦と日本の「蔦屋書店」の未来戦略について紹介します。

(1)バーンズ&ノーブルと蔦屋の未来戦略

アメリカの書籍業界では最近まで「バーンズ&ノーブル」と「ボーダーズ」の2.5体制でしたが、ネット通販の「アマゾン」が勢力を持ち、その結果、ボーダーズは倒産して今や「リアル店舗のバーンズ&ノーブル」と「ネット通販のアマゾン」の「2.5体制」になっています。 アマゾンの強さは強烈で、通常型の書店と音楽ソフト・映像ソフトのCD・DVDの店であるボーダーズが倒産に追い込まれましたが、バーンズ&ノーブルは図書館型書店(圧倒的な品揃え、立ち読み座り読み自由、カフェと一体化の本好きの人のための書店)としてネット販売のアマゾンとは一線を画し、体験型の書店として存在しています。 アマゾン(正式にはアマゾンドットコム)の勢いはアメリカでも日本でもすさまじく、書店のリアル店舗が壊滅状態になる可能性を持っています。 事実、アメリカでは書店チェーンはバーンズ&ノーブルのみとなりました。
私は2015年11月のメリカ視察中にバーンズ&ノーブルを見てびっくりしました。 それは、バーンズ&ノーブルは本好きの人々を対象とし、体験の場を提供する図書館型書店であったのが、圧倒的な本の売場というイメージは希薄化して音楽ソフト・映像ソフト・ゲームソフト、さらにキッズ用の玩具の売場が多くを占め、従来のバーンズ&ノーブルの本好きの人たちにカスタマイズ化した図書館型書店のイメージではなくなっていたからです。 このバーンズ&ノーブルの変化は、ボーダーズが倒産して音楽ソフトや映像ソフトのリアル店舗でのリアル店舗がなくなったため、このようなソフト関連売場を強化したのか、またはアマゾンに切り崩された売上が、本だけでは稼ぐことができないために本以外の商品を置いているのかは定かではありませんが、本来のバーンズ&ノーブルの強みが低下していると感じました。
最近、日本では書店チェーンの最大手である「蔦屋書店」が二子玉川ライズの中に「蔦屋家電」の名称でネット販売対応書店(T・SITE)を開発しました。 現在、TSUTAYAはT・SITEを全国に続々と開発しています。 書店の概念を離れたTSUTAYAのT・SITEは、アメリカのバーンズ&ノーブルがネット販売のアマゾンに切り崩されて大苦戦しつつあり、かつ図書館型書店のイメージが希薄化しているのに対して、新たなリアル店舗としての書店を構築したものです。 今はまだ実験店舗ですが、全国的に続々と展開しつつあります。 この二子玉川の「蔦屋家電」の特徴は次の通りです。

①モノ離れした後の店舗スタイルにおける脱・モノ時代のモデルを形成している。

②特定のライフスタイルを切り口として書店、CD・DVD、家具・インテリア、ホームオフィス(情報家電・ステーショナリー)、イート&コーヒーカフェの複合の品揃えをしている。

③居心地感(図書館や博物館の異次元プレイス)を創造して、ネット販売にはない体験・体感空間を演出している。

④老若男女の特定の趣向(好)に対応したライフスタイルショップである。

⑤デジタルネイティブ社会に対応したインターネット化した空間づくりのショップである。

⑥TポイントとTカード等のハウスカードによる企業のデータ壁を取り払い(各企業の顧客データを串刺し)、顧客やライフスタイルの囲い込みのプラットホームとしてのショップである。

⑦総称「書籍」「CD」「カフェ」「図書館」「異次元空間」「アップルストア風」「東急ハンズ風」「シャーパーイメージ風」の書斎をイメージしたプレイスメイキング(居場所づくり)を行っています。

今のリアル店舗とネット通販の競争関係は

①第1段階のマルチメディア時代で将来的にはバーチャル店舗を恐怖の存在と見た時代

②第2段階のクロスメディア時代で、O2O(オンライン・ツー・オフラインあるいはこの逆)のようにリアル店舗とバーチャル店舗は、リアル店舗の存在がバーチャル店舗との相乗効果を発揮し、バーチャル店舗の存在は共存共栄の存在と見た時代

③しかし、今や第3段階のオムニチャネル時代やコンテキスト時代と同時に、バーチャル店舗の存在は我々が考えているよりもすさまじい勢いでリアル店舗を直撃し、バーチャル店舗の売上が30~50%に達する可能性がある存在と見た時代

現在、多くの流通業界やSC業界ではバーチャル店舗対応のリアル店舗やシステムづくりを行っていますが、おそらく我々の予想を超える強烈なバーチャル店舗の時代が到来することが想定できます。 それゆえに、「蔦屋家電」や「TSUTAYAのT・SITE」のような桁外れの脱・書店づくりでないと本格的に到来するバーチャル店舗時代に対応できない可能性があります。

(2)ニューモダン消費とTSUTAYA

消費はプレモダン消費、モダン消費、ポストモダン消費、ニューモダン消費へと進化します。 モダン消費時代がモノ離れした後のポストモダン消費(需給ギャップがマイナス時代・デフレ経済時代)となり、その後のニューモダン消費へと進化しないと、一国の経済は長期低落化の道を歩むことになります。 ニューモダン消費は次の概念を持った消費です(六車流:流通・マーケティング理論)。

①今まで存在していなかった新しい商品(物・飲食・サービス・情報・コンテンツ)と新しい付加価値(品質・機能・こだわり)の消費

②今までも存在していたが、新しい切り口の商品と新しい切り口の付加価値の消費

③今までマイノリティ(少数派)であった商品や付加価値をマジョリティ(多数派)に拡大・創出した消費

ニューモダン消費は価格弾力性(安ければ買う、高ければ買わない)が希薄化し、商品の斬新さとニュー付加価値の高さによって顧客は購買の意思決定をします。
日経新聞朝刊(2015年8月10日)に東京・二子玉川にある大型商業施設「二子玉川ライズ」にオープンした「蔦屋家電」の記事がありましたので早速、見てきました。 TSUTAYAは書籍とCD・DVDコンテンツの店から図書館型書店として「カフェ」や「座り読み&キッズ遊びコーナー」を付加したライフスタイル型書店を展開していますが、二子玉川ライズではさらに、家電とインテリアを加えたライフスタイルメガストア(二子玉川ライズでは7,000㎡、文化・生活雑貨のスペシャリティ百貨店)を開発しています。
日本では家電チェーンも書店チェーンも一時の勢いは衰えましたが、アメリカのように激しい新陳代謝は起こっていません。 アメリカの家電チェーンは現在、「ベストバイ」(カテゴリーキラー型の家電チェーン)と「アップルストア」(メーカーのショールーム型の直売店)の2.0体制の時代で、コンプUSAやコンピューターシティ、レディオジャックは淘汰されています。 また、書店も「バーンズ&ノーブル」(図書館型書店)や「アマゾン」(インターネットの書店)の2.0体制で、ボーダーズは淘汰されました。
2001年からアメリカのニューモダン消費時代が開始して15年、日本も1991~2010年(20年間)のポストモダン消費を経て2011年からニューモダン消費時代へと突入しました。 現在、TSUTAYAが実験店舗としてニューモダン消費対応の「書店」「家電・インテリア」「カフェ」と「異次元空間」「インターネット空間」を組み合わせた文化・生活雑貨のライフスタイルを提案するスペシャリティ百貨店(特定分野の商品グループあるいはライフスタイルを絞り込み、客層は絞り込まずに全面対応するメガストア)を展開しています。 まだ実験店舗ですので、持続可能な成功とは必ずしも言えませんが、理論的には正しいコンセプトの店づくりです。今後、持続可能な成功する店づくりとするためには、完成度を高く仕上げることです。 TSUTAYAの文化・生活雑貨のライフスタイルメガストアは、書籍といい、家電といい、インテリアといい、カフェといい、従来から存在していた商品(物・飲食・サービス・情報・コンテンツ)を新しい切り口で展開し、新たな付加価値(品質・機能・こだわり)を付加したニューモダン消費対応ストアです。 その内容は次の通りです。

①モノ離れした後の店舗スタイルにおける脱・モノ時代のモデルを形成している。

②特定のライフスタイルを切り口として書店、CD・DVD、家具・インテリア、ホームオフィス(情報家電・ステーショナリー)、イート&コーヒーカフェの複合の品揃えをしている。

③居心地感(図書館や博物館の異次元プレイス)を創造して、ネット販売にはない体験・体感空間を演出している。

④老若男女の特定の趣向(好)に対応したライフスタイルショップである。

⑤デジタルネイティブ社会に対応したインターネット化した空間づくりのショップである。

⑥TポイントとTカード等のハウスカードによる企業のデータ壁を取り払い、顧客やライフスタイルの囲い込みのプラットホームとしてのショップである。

⑦総称「書籍」「CD」「カフェ」「図書館」「異次元空間」「アップルストア風」「東急ハンズ風」「シャーパーイメージ風」の書斎をイメージしたプレイスメイキング(居場所づくり)を行っています。

これらのコンセプトはニューモダン消費時代に適切なものですが、ビジネスとして成功するためには「ニーズやウォンツがいくら多くても、持続可能な競争優位性があること」が前提となり、かつ「完成度高く仕上げること」(顧客のニーズ&ウォンツを形とメカニズムで仕上げること)が必要となります。 日経新聞では、TSUTAYAのような店づくりを「アウトサイダーの視点」と概念づけており、TSUTAYA、マッシュホールディングス(コンピューターグラフィック製作会社が人気ファッションブランドを開発)、セブン&アイホールディングス(日本独自のこだわりCVSの開発)を取り上げています。

流通トピックス情報②

デザートとチーズケーキファクトリーの10~15億円の売上

「チーズケーキファクトリー」はアメリカの超有名なファミリーレストランで、1店舗当たり売上が平均10 億円(優良な店は15 億円、最高はハワイの25 億円)のSCのマグネットストアとしてディベロッパーにとって是非欲しいレストランです。
このチーズケーキファクトリーの超売れるメカニズムは「流通とSC・私の視点1859」に詳しく説明しています。 今回はチーズケーキファクトリーを別の視点で売れるメカニズムを解明します(六車流:流通・マーケティング理論)。
アメリカの食事(特にディナー)の食の行動システムは科学的で良く出ています。 すなわち、

①前菜(オードブル・アパタイズ)→肉・魚類のメインの食事を食べる前に、野菜等のサラダ類を食べ、体の消化システムを良好にします。

②飲酒・飲み物(ビバレッジ・ドリンク)→ビール、ワイン、ソフトドリンク等の食事の促進的役割を持っています。

③主食(メインコース)→肉・魚類を中心とする狩猟民族の主力食事でカロリーやエネルギーの基となります。

④別腹軽食(デザート)→主食で満腹となっても、お口直しや雑談補完軽食としての役割を持っています。

アメリカでは、基本的にディナーは上記のシステムで進行します(日本でも基本的には同じですが、アメリカの影響を受けています)。
ここで問題にしたいのが「デザート」の役割と「チーズケーキファクトリー」の関係です。
胃袋が満杯なのにデザートを欲しがる時に本能的に胃に空きスペースを作るということは科学的に証明されています。 すなわち、別腹の食事は「売り手から見ると+α ビジネス=客単価を高くすることができる」、「買い手から見ると食事の後の会話の手持ちぶたさの解消と別腹食事を欲しがる本能」が一致するビジネスです。
実はチーズケーキファクトリーは、本来ならばデザートであるチーズケーキの店が開発したファミリーレストランなのです。 チーズケーキファクトリーの生い立ちは次の通りです。

①チーズケーキファクトリーは、元々チーズケーキを売るケーキ屋さんでした。

②チーズケーキファクトリーは、チーズケーキ分野で「色々なチーズケーキがある」と「おいしいチーズケーキ」の店というブランド(名声)を確立しました。

③そこでチーズケーキファクトリーは、レストランを展開する時に、本来ならば脇役であるデザートを名物(ここにしかない差別化されたデザート)として、店名もチーズケーキファクトリーと、元々の名前をそのまま使いました。

④それが、ファミリーレストランの持つ本来の業態固有の特性以外に、デザートとしてファミリーレストラン(チーズケーキファクトリー)のチーズケーキを食べたいというレストランの選択に結びつきました。

⑤すなわち、チーズケーキによる3割差異化・特化、ファミリーレストランによる7割総合化の勝ちパターン戦略が確立されました。

このように、チーズケーキファクトリーは3割差異化・特化戦略としての本来の主力食事以外のデザートの魅力で顧客を創造した事例としてチーズケーキファクトリーは希有な存在です。 それゆえに「おいしい・珍味な前菜」「おいしい珍味なビバレッジ」もマーケティング戦略として有効です。 特に、ディナーや食事の決定権の強い「女性と子供」が、メインの食事以外で好むものづくりはチーズケーキファクトリーが成功したように強力なマーケティングです。

流通トピックス情報③

シアーズとブルーミングデールズのSCの核店としての危機

今、アメリカでSCの核店としての「シアーズ」と「ブルーミングデールズ」が危機状態にあります。 アメリカのSCの核店をグレード別に分類すると次の通りです。

グレード 核店 業態のタイプ
上クラス(ツーランク上) ニーマンマーカス、サックスフィフスアベニュー スペシャリティ百貨店
上クラス(ワンランク上) ノードストローム、ブルーミングデールズ
中中クラス(スタンダード) メイシーズ(600店)
中下クラス(ワンランク下) JCペニー、シアーズ プロモーショナルデパートメントストア(PDS)
下クラス(ツーランク下) ターゲット、ウォルマート ディスカウントストア(DS)

今後、このままではシアーズとブルーミングデールズがSCから退店が続出することが想定されます。 私の考えでは、「サックスフィフスアベニュー」「シアーズ&JCペニー」がSCの核店としての存在が希薄化しています。

①サックスフィフスアベニュー

サックスフィフスアベニューは上クラスの百貨店ですが、最近はアウトレット業態(百貨店の普及版)のオフフィフスが中心で、本来の高級百貨店での出店はほとんどしていません。 同じ高級百貨店のニーマンマーカスやワンレベル下のノードストロームがサックスフィフスアベニュークラスのMDingを強化しているため、SCの核店としての位置づけが希薄化しています。

②ブルーミングデールズ

ブルーミングデールズは中上クラスの百貨店ですが、同じクラスのノードストロームとの競争に対応できていません。 ノードストロームの価格帯は30,000円を中心に15,000~60,000円のプライスゾーンでキャリア対応、エレガンス対応、トラッド対応の40代を基軸とする30~50代対象の上質感のある百貨店です。 アメリカの百貨店業界の1位・2位であるフェデレーテッドグループとメイグループが合併し、3位であったノードストロームが一挙に浮上(2.5における0.5から1.0にレベルアップ)して、チェーン店としてもMDingにおいても強力な存在となっています。
一方、ブルーミングデールズはメイシーズグループ(600店)の上位概念の百貨店ですが、グレード的には中上クラスでノードストロームと同じ位置づけにあります。 ただ、ノードストロームが強力であるがゆえにヤングマインドのMDingをとっており、ノードストロームとは差別化しています。 しかし、基軸価格30,000円クラス(プライスレンジ15,000~60,000円)はノードストロームの客層には適正な価格であるのに対して、ブルーミングデールズの若い客層にとってはやや高く、マーケット的にはボリュームが少ないマーケットに対応しています。 実は、ノードストロームも今から10年前にヤング志向の百貨店に脱皮しようとして大失敗しています。 ブルーミングデールズはノードストロームの失敗の轍を踏もうとしています。 それゆえに、ノードストロームがSCの核店となっている場合、ブルーミングデールズのSCの核店としての位置づけが希薄化しています。

③シアーズ&JCペニー

シアーズとJCペニーはPDS(プロモーショナルデパートメントストア=カジュアルかつリーズナブルな百貨店)として、中下クラスの核店です。 最近、ツーランク下のターゲットがディスカウントストアでありながら、こだわりMDingとおしゃれなDSとしての位置づけで、下クラスのグレードにもかかわらずSCの核店として導入されています。 本来ならば、SCのモール専門店との相乗効果を発揮する核店は中下レベルのJCペニーやシアーズローバックまでであり、下レベルのターゲットは対象外でした(ウォルマートは今でもSCの核店としては対象外)。 ところが、ターゲットがこだわりMDingやおしゃれなDSとしてモール専門店との相乗効果を発揮できるようになり、ターゲットもSCの核店としての地位を築きました。 その結果、日本のGMSに相当するPDSであるJCペニーやシアーズといったPDSの賞味期限(1971年にPDSになって40年目)が過ぎ、今やMDing的にJCペニーは最低限のポジショニングを維持していますが、シアーズ(DSのKマートと合併)はメイシーズとターゲットの“間”MDingで切り崩され、SCの核店としての位置づけが希薄化しています。